« 2017年04月 | メイン | 2017年09月 »

2017年07月03日

一般質問H29.6.29①

細川かをりです。

昨年暮れに、新潟県糸魚川市で大規模火災があり、家屋147棟を含む約4万平米が焼損しました。
私は、かつてと違って現代は消防技術や様々な防火対策が進んでいるから、そんな大火は起こりにくいと甘く考えていただけに、大変驚きました。
そして今年2月28日、JR武生駅から約500メートル西にある総社通り商店街の建物密集地から出火。火は長屋のように連なった屋根や屋根裏を伝い瞬く間に燃え広がりました。でも、建物の間が狭くて消防車両が十分入れず、消火活動は難航。5棟を全焼したほか1棟を半焼、4棟の一部を焼く火事となりました。焼損床面積は合計約1436平方メートル。
今回は背後の漆喰の蔵のおかげでそれ以上の延焼はまぬがれたものの、糸魚川の大火は決して他人事ではありません。

糸魚川の火災地域は、老朽化した木造建築物や狭隘な道路の多い「木造密集地域」いわゆる「木密地域」です。私の住む越前市も中心部はそうではないかと思われます。また、糸魚川市と越前市の火災現場の両方とも「JR駅に近い都市計画法の『商業地域』であり『準防火地域』だ」という共通点があります。「準防火地域」は、家を建てる際に外壁などの防火構造が求められ、不燃化を特に進めなければならない所ですが、都市計画法が定められた昭和43年以前の家屋に遡っての適用にはなっていません。従って、防火構造への改修などは持ち主の判断に任せられているので、なかなか不燃化が進まないのが実情です。
私は、「火災」に強い地域づくりのために、「木密地域の不燃化」が早急に必要で、こうした地域を防火指定するだけではなく、不燃化を加速化するためのインセンティブ=刺激策が必要だと考えます。

一般的に、木密地域の不燃化は、「不燃領域率60~70%」が目標値です。密集していても不燃領域率が70%以上だと燃え移らない、延焼しないという理論値です。
「木造住宅が密集し、道路が幅員4m未満で狭い、公園などの空き地が無い、」という場合、不燃領域率は30%、40%だと思われますが、そうしたエリアは県内に結構あるのではないかと想像するところです。
① そこでまず、県は不燃化の必要な木密地域をどの程度と考え、どれだけ存在把握されているのか県内の現状を伺います。


糸魚川や越前市のような中心市街地の木密地域は、「高齢化率が高い、人口減少が進んでいる、空き家が多い、独居高齢者世帯が多い」という共通点もあります。
車社会の地方都市では、若い夫婦が住まいを選ぶ際、「利便性が良く、最低2台分の自家用車の駐車場が確保できる所」が大きなポイントとなるそうです。木密地域は狭隘道路が多いので運転に支障があり、駐車スペースも極めて少ないので、おのずと地域外へ人口流出することになります。高齢者が残されたとなると、家屋の建て替えが進まないばかりか、時間とともに空き家が増える一方となります。

一般的には、個人の住宅の不燃化は個人の財産の問題です。しかしながら、木密地域の場合、糸魚川の事例のとおり、1軒住宅が燃えるとすぐ延焼しますから、個人住宅の不燃化は公的課題、責任が生じると考えます。
住民のライフサイクルに任せているだけでは、不燃化や木密地域解消がなかなか進まない現実に、県もしっかりと向き合うべきです。

② 木密地域の課題と、行政による支援の必要性について知事のご認識を伺います。

一般質問H29.6.29②

東京都は、平成7年の阪神淡路大震災を契機に「木密地域」を「東京の最大の弱点」と位置づけ「整備地域」を定め、「延焼遮断帯となる道路の整備」や「建物の不燃化」「安全な市街地形成」といった防災都市づくりを進めてきています。しかし、「居住者の高齢化による建替え意欲の低下」、「敷地が狭小等により建替えが困難」、「権利関係が複雑で合意形成に時間を要する」といった課題などから、計画道路の整備率や不燃領域率が目標値に達していません。そこで、平成24年「木密地域不燃化10年プロジェクト」をスタート、従来より踏み込んだ整備促進策によってそれぞれの区とともに木密地域解消の加速化を図っております。
「不燃化特区」を設け、不燃領域率70%を目標とした都市整備です。
不燃領域率を上げるためには、「耐火建築を増やす」、「消防車が進入できる幅員6m以上の道路を増やす」、「最低でも100㎡の小公園、広場を増やす」ということになります。
これは、東京都板橋区や豊島区の事例で、コンサル・デザインは、福井ブランド大使で元港区長である原田敬美さんです。

(図の説明)

こうした事業を実現させている東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」の支援項目をいくつかピックアップしますと、住民や対象地区に対し、

・住民合意のための町づくりコンサルタント派遣
・権利関係調整のためのコーディネーター、弁護士、税理士など専門家の派遣、
・道路に接していない敷地の先行取得支援、
・特区内での不燃化建て替えを行った住宅の固定資産税・都市計画税を5年間免除、
・設計費一部助成、
・除却費全額助成、
・更地化の場合の土地管理費用助成、
・公営住宅入居の優先的な斡旋

といった制度を設けています。さらに、区に対しては

・用地折衝の民間委託支援
・公園面積取得要件の緩和
・防災施設建築物の都費補助額の上限引き上げ

といった様々な支援メニューが並びます。
現在、こうした手厚い支援により、各区が木密地域の解消・不燃化をどんどん進めている最中にあるわけです。

他にも、名古屋市や京都市など、木密地域解消に向け、都市部中心に様々な取り組みが始まっていますが、全国的には地方都市が遅れている感じです。

③ 糸魚川や越前市の火災をうけ、福井県が率先して地方での木密地域解消に踏み出すべきと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。

ちなみに京都市は、「地区」を選定し、歴史的な町並みを保全しつつ防火にも対応するため、準防火地域の都市計画決定を廃止し、屋内の火災対策を主眼に置いた基準を適用可能にしています。

一般質問H29.6.29③

また、国は平成23年閣議決定した住生活基本計画の中で、「地震時等に著しく危険な密集市街地の面積」約6,000haを平成32年度までに概ね解消すると目標を定めて、地方公共団体における密集市街地の改善に向けた取り組み状況を取りまとめています。

しかしながら、その対象となる全国197地区の多くが首都圏、名古屋市、京都市、大阪市近郊など、都会中心です。新潟県、福井県は対象地区「0」。当然、大火のあった糸魚川市も外れています。県の担当課に理由を伺ったところ、地区指定の要件の中に「住宅戸数密度が80戸/ha以上」の規定があり、それに該当しなかったとのことです。 
地方都市、特に北信越地域は平均的に住宅が大きいので、「1ha=100m四方に80軒以上の住宅」というのは厳しい要件です。
糸魚川での大火、地方市町の中心市街地衰退の現状を考えれば、地方での木密地域解消も必要で、国の制度設計を地方にも適応できるようにしていただきたいと思うところです。

④ 国に対し、地方の町の木密化解消につながる施策を求めるべきと考えますが、知事のご所見を伺います。


後半は優れた県産品に関し伺います。

今年2月、種子法廃止の法案が閣議決定され、4月に国会で成立、来年4月に種子法が廃止されることになりました。これまで、地域に合った良質な種子が農家に行き渡るようにと、種子法の下、農業試験場の運営予算の手当などを国が責任を持って担ってきていただけに、「都道府県の種子生産のために確保されてきた予算の根拠がなくなった」とか、「農業の企業参入や大規模化と合わせ、地域の希少品種が消えていくのではないか」とか、「将来は多国籍企業に種子を握られるのではないか」などと、様々な不安の声が上がっています。
福井県の農業試験場は、かつて「コシヒカリ」を生み、昨年には「いちほまれ」という、食味値の高い生産しやすい優れた品種を生み出すという素晴らしい業績を残してきています。それだけに、今後、種子法廃止が本県の農業試験研究にどういった影響を与えるのか気がかりです。

⑤ 種子法廃止の影響を短期的・長期的な視点でどうとらえておられるのか、また、県の農業試験研究の方針に何らかの変化があるのか、合わせて伺います。

一般質問H29.6.29④

さて江戸時代、松平春嶽はじめ福井藩のお殿様は、福井市灯明寺畷の水田で取れるお米を「お引きどり米」として食べておられたそうです。そこで取れるお米は味がとても良く、反当りの収穫量も多い、しかも、凶作の年でもそこだけはお米がとれたと言われています。

そこに目を付けた「福井県農業試験場」の寺島利夫博士が、水田土壌の調査を始めました。その後、調査研究は北陸のエジソンともよばれた酒井弥理学博士に引き継がれます。
その結果、その土の中にいたラン藻類のシアノバクテリアが土の中で酸素を生み出し、そのおかげで酸素欠乏による根腐れを防止、さらに酸素によって土中のバクテリアを増やし、栄養豊富な土の状態にしていたのだと分かりました。

現在では、そのシアノバクテリアを繁殖させるための土壌改良資材が開発され、ピロ―ル資材と称して販売、この土壌改良によって農作物を収穫することが「ピロール農法」です。ピロールとは、窒素を含む五員環(五角形)化合物の総称です。

ピロ―ル農法には優れた点がたくさんあります。

・有機質たい肥は二酸化炭素を出すけれど、ピロール農法は出さない。
・ピロ―ル資材は生石灰が20%以上使用されているので強アルカリ性であり、酸性雨の対策に適している。
・シアノバクテリアは空中窒素を固定する働きがあるので窒素肥料などの削減が可能なため河川浄化につながる
・農薬やトリハロメタンも分解可能
・有機質なのにウジ、ハエがわかない。
そして取れたピロ―ル作物は、高カルシウムでミネラルなど栄養豊富だそうです。ピロ―ル資材を混ぜた土で「いちほまれ」を作ったら、どんなことになるのか想像しただけで楽しみです。

何だか夢のような話ですが、酒井博士は大阪大学大学院を修了後、大阪大学産業科学研究所を経て昭和41年、文部省在外研究員としてカリフォルニア大学に留学、アルバータ大学主任研究員や講師を務めておられたという経歴で、ピロール農法に関する著書には分析方法なども明示されたデータがたくさん記されています。

また、先般、砂防地すべり技術センターで、前気象庁長官で富士通研究所顧問の西出則武氏の「新たなステージに対応した気象防災情報の改善」という講演を拝聴しました。西出氏は「地球温暖化は100年のオーダーであり、まだ40年のデータなので、今後のデータの蓄積を行わなければ温暖化と言い切れない」としながらも「短時間強雨が全国的に増える。平均2倍。大気中に蓄えられる水蒸気量が増え、降るときはどっと降るが、飽和水蒸気がたまるまで時間がかかるため、雨の降らない日数も増える。シシオドシの竹筒が太くなった感じである」と述べられました。気象が「新たなステージ」に突入するならば、農作物の凶作も有り得ます。土壌改良して、強い畑や田圃を作るに越したことはありません。 

⑥福井発のこの農法を、第三者機関として県が裏付け調査し、優れた県産資材として支援してはいかがか伺います。

一般質問H29.6.29⑤

同様に、県内では様々な社会に役立つ機能性を持った製品や資材が出てきています。
たとえば、漆喰と和紙や繊維のコラボレーションです。
漆喰は、日本で豊富にある鉱物資源「消石灰」を主原料としています。消石灰はやはり強アルカリ性で、強力な抗菌性、防かび効果、消臭効果、調湿・耐結露、有害物吸着といった様々な効果があり、昔から日本の土蔵には漆喰が使われてきました。内装材として使うと、その部屋の空気が淀みません。さらに特筆すべきは抗ウィルス性です。消石灰は、鳥インフルエンザにかかった恐れのある鳥や地面の殺菌消毒財として使われます。ウィルスの飛沫を強アルカリにして、中のウィルスを死滅させるのです。ですから、診療所やケアセンター、災害時の仮設住宅などでノロやインフルエンザなどウィルスの蔓延防止に効果を発揮します。昔の人たちは、経験でそういったことが分かっていたのかと思うと驚きです。

この日本古来の自然素材の「漆喰」が、近年塗料化され、さらにこの度、越前和紙にこの漆喰塗料を染み込ませた漆喰ペーパーが開発されました。これを活用し、漆喰の機能を有した壁紙などの建築資材として製品化されれば、漆喰の機能を日常生活で活かせます。何より、越前和紙産地の光明になると期待を寄せています。
他にも、柔らかい和紙にしみこませて消臭や防カビ効果のある包み紙にしたり、繊維にしみこませてタペストリーにしたり、漆喰と県産品のコラボレーション展開は広がりを期待できます。
これも、先ほどのピロ―ル農法同様、機能性の高さを誇れるものですが、やはり第三者の確認があるといいなと思います。


⑦こうした県内の優れた素材・製品はまだまだたくさんあると思いますが、それらの機能性を客観的に提示できるよう、第三者機関として県が裏付け調査してはいかがか伺います。


一昨年、産業常任委員会で沖縄の工業技術センターへ視察に行きましたが、そこでは食品の分析ができたり、検査機器を広く開放したりしておりました。なるほど、沖縄のお土産・物産店へ行くと、商品の説明ポップには健康や美容にいい成分が含まれているといったことがちゃんと書かれています。
県内でも、様々な県の商品・製品が「健康」や「美容」などを謳っており、いずれも誇れるもので、ぜひ多くの人に購入いただきたいと願っています。ただ、沖縄の販促PRと比較すると、その「健康」なら「健康に何故いいのか」といった具体的裏付けが弱いと感じています。
たとえば「健康美食」のメニューは、ただ野菜や魚を食材に使っているということでは納得し辛く、「全体で何カロリー」とか「ビタミンCたっぷり」といった踏み込んだ表示が欲しいところです。
県内の実績ある小売店のバイヤーの方に伺うと、「食べ物だったら美味しいのは当たり前であり、『健康・美味しい』はもう聞きたくない」「お客様にとってどんなメリットがあるか、特に主婦の気持ちになってキャッチコピーを書くことがポイント」と教えてくださいます。
買い物をするときのキャッチコピーは大事です。その説得力次第で購入判断が分かれます。

⑧そこで、県内の優れた食品の魅力を、広くアピールするため、県内研究機関が食品の栄養成分分析などを積極的に支援してはいかがでしょうか。

⑨また、先ほどご紹介したピロール資材や漆喰ペーパーなど、特に高機能で社会に役立つものを県として「認証」する制度を設けてはいかがでしょうか。ご所見を伺います。

すでに機能性を謳う製品には、様々な認証マークがついていたりします。中には本当に信頼できる第3者の認証なのか、自分にとって都合のいい身内機関の認証なのか、怪しげな認証もあります。消費者側からすれば、どんな認証でもついていればいいというものでもありません。ですから、特に県内で頑張って本当にいいものを作ったところがあったら、公的機関が検査データを確認し認証マークを与えてくだされば、消費者も安心でき、力強い後押しになると思います。

以上、質問を終わります。