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2017年04月17日

一般質問H29.2.23①

細川かをりです。

政府は、我が国の経済成長の隘路の根本にある少子高齢化の問題に真正面から取り組むとして「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定しています。一億総活躍社会とは、若者も、高齢者も、女性も、男性も、障害のある方も、いちど失敗を経験した方も、一人ひとりが家庭や地域や職場で自分の力を発揮し、生きがいをもてる社会です。
知事も、「県民が一人一人活躍できる社会づくりを進める」と述べておられます。
そこで、全ての人がそれぞれの事情に合わせて活躍できることを願い、質問します。

まず女性政策です。
以前、「福井県は働く母親が多いので、女性の勤続年数も、月当たりの労働時間も全国平均より長い。しかし、男女の賃金は他県より格差が大きい。」「女性の就労率は全国トップクラスなのに、管理職比率は低い」「つまり、福井県は、全国と比べて女性の能力が評価されていない県であり、女性の地位向上がもっと必要な県だ」と述べました。

① 知事は「継続的にキャリアアップ、職場環境の整備を進めていく」旨述べられましたが、あれから3年経ち、福井の女性の平均賃金の男女格差や女性管理職の登用率はどう変化したか伺います。

「継続的なキャリアアップや職場環境を整備する」場合、各企業やそこに働く方々の理解や、行政による誘導策が求められます。県での取り組みとして、新年度、新たな実施施策が具体的に予算措置なされているのでしょうか。短期的には数値が上がることは可能ですが、長期的な視野に立っての取組みは、構造改革が必要かと思います。

② 今後の課題と明確な方向性を伺います。

一般質問H29.2.23②

前回、私はここで人手不足に関して述べましたが、最新の有効求人・求職者状況を見ると、人手不足は短期間でさらに深刻化しています。製造業の事業者の中には、労働者を求めてベトナムなど東南アジアに向かう方も多く、「日本も移民を受け入れるべきだ」という声さえ聞こえます。
今後も外国人労働者は増え続けるだろうと予想しますが、受け入れ環境はまだまだ整っていないと感じます。
例えば、災害が起きた際には、行政からだけでも地域に様々な情報発信・伝達事項がありますが、外国人労働者やご家族の事を考えると、それらを多言語に通訳することが求められます。それが実際にできるかどうか。
現在、福井市・鯖江市・越前市の国際交流協会で外国人の防災について研究を進めています。先般、3協会合同で災害シミュレーション訓練を行ったところ、訳して伝えたい事柄は次々出てくるのに、市町の国際交流協会はスタッフが少なく応援体制も脆弱、いざとなったら対応が困難と、危機感を強めています。また、むしろ平時の防災教育が日本人以上に必要との認識で一致していますが、こちらもなかなか進展し辛い状況です。

③外国人の防災について、県全体で取り組むことが必要と考えますが、これまでどのように考え、どう取り組んできておられるのか、また、今後どのように強化していくのか、伺います。

例えば、技能実習生として入国する初めには1か月間の研修期間がありますので、そこへ県が指導者を派遣したり、PRビデオを作ったりして防災教育を行う方法などが考えられます。

④防災以外にも、外国人労働者が増えれば増えるほど、地域社会で考え、対応すべき事柄が多くなっていきますが、県は現状をどのように認識し、今後どのような取り組みが必要と考えておられるのか伺います。

一般質問H29.2.23③

人手不足をカバーすべく、人工知能(AI)やドローンなどの活用、様々な分野でのIOT化が進むと思われます。AIを使う人間とAIに使われる人間に分かれてしまうかもしれません。
日本社会はどうなるのか、将来のためには、どういった人材を育成すべきなのだろうかと、
先が見通しにくい世の中になってきたなあとつくづく感じます。

厚生労働省が設置した「働き方の未来2035」よるとAIの急速な発展などで、これからの世の中は猛烈な勢いで変わり、常にスキルアップが必要となる。だから、「学び直し」こそが重要なポイント……と書かれています。
現実に、日常生活ですら、携帯電話がスマートフォンになり、これを駆使・活用できる人とそうでない人との間に、生活スタイルの差ができている時代です。ましてや仕事で求められる専門性は、先にも述べたAI・ドローン・IOT化などでどんどん変化しています。「学齢期に貯め込んだ知識や技術を、就職したら指示通りに使う」ということでは対応しきれなくなっています。

EUは、1996年を「ヨーロッパ生涯学習年」と定め、従来の教育制度を再整備しています。16歳までを「基礎教育:生涯で一度だけ通用する教育段階」と見なし、16歳以降を「生涯教育」とひとくくりにしました。生産活動の進歩・社会の複雑化・職業教育の多様化と高度化で、成人の再教育・再訓練が必要になったからです。
就職する直前の学歴で一生の仕事や収入が決まるという固定的な社会ではなく、必要に応じていつでも学び、最終学歴は固定しないという制度に変わり、これまでの「学歴」と言う概念も大きく変化、教育は人生の一時期のものではなく、これからは人生全体の重要な一部となると解釈されるようになりました。

当時日本にも「生涯学習」の考え方は入ってきましたが、公民館でのカルチャー教育といった形で収まっています。でも、先進国は本格的な生涯学習社会に突入しています。
グラフをご覧ください。これは、大学に入学した25歳以上の新入生を調査したOECDの資料です。他の先進国では、成人以降の「学びなおし」が活発なのに、日本はまだ25歳前の学歴のみで社会的不平等を固定していることを表しています。

知事、私は、一億総活躍、自分の力を発揮し生きがいをもてる社会にするためには、本気で「学びなおし」という制度に取り組むべきだと結論付けています。
県内を見渡すと、雇用のミスマッチや景気の波のはざまで職につけなかったミレニアル世代が家に引きこもっています。求人を出してもなかなか人が来ないので事業継続に危機感を持っている中小企業の悲鳴が聞こえます。「学びなおし」の仕組みをしっかり整えていただきたい。

⑤まずは、知事の「学びなおし」に対するご認識と、今後の取組み方針をお聞かせください。

一般質問H29.2.23④

具体的な提案をいくつかします。

県は中小企業産業大学校に、「学びなおしサポートセンター」を開設し、キャリアアップの相談、学びの情報提供、学習用ブース設置などを行うとともに、通信制大学の入学説明会なども誘致しています。先日見学に伺ったのですが、がらんとしたスペースにパンフレットが並んでおり、さらなる充実が必要と感じました。

案内されている通信制大学などは、医療福祉や保育などが目につきましたが、県内雇用の状況から考えると、建築土木・保安・設備工事といった業種で深刻な人手不足を生じているのですから、工業系大学やポリテクセンター、産業技術専門学院との連携がもっと必要だと感じました。ジョブカフェからポリテクセンターへの紹介はありますが、学びなおしサポートセンターでもぜひ建築土木や設備工事などの仕事につながる流れを構築・紹介すべきです。
⑥県内中小企業振興のためにも、工業系大学やポリテクセンター、産業技術専門学院との連携強化を図るべきではないでしょうか?

一般質問H29.2.23⑤

国は一昨年、社会人の学びなおしを支援する「職業実践力育成プログラム」(BP)認定制度を創設しました。これは、大学・大学院・短期大学・高等専門学校における社会人や企業のニーズに応じた職能向上のプログラムを文部科学大臣が認定したもので、週末開講や給付金制度など、社会人が受講しやすい工夫がなされています。

183の認定プログラム中、福井県での認定はゼロ。学び直しにおいても、県外に出て帰ってこないのかと寂しい思いを感じました。
福井県内で、県内の人材育成につながる「学びなおし」の仕組みつくりと充実を望みます。また、県は今年度から建設、看護、情報サービスなど、人手不足の業種に就職する県外大学生等の奨学金返還を支援されていますが、もう一息、「学びなおし」に対する支援も必要かと思います。

⑦県立大学はもちろん、県内大学に対し、社会人枠を充実させることを求めるとともに、「学びなおし」で県内企業に就職する場合の学費支援制度を設けてはいかがか伺います。

⑧さらに、県は中小企業産業大学校で企業の教育支援として働く人の教育研修を行っていますが、そもそもここで、「学びなおし」や再挑戦を可能にするための研修、資格取得につながる研修を充実させてはいかがでしょうか。大学や高校との連携があってもいいと思います。

⑨最期に、こうした「学びなおし」の制度や支援策を広くPRし、若者が情報収集によく使うスマホのサイトを充実させたり嶺南など県内各所でサポートできるようにしたり、県民の目に触れやすく使いやすくすべきと考えますがご所見を伺います。

時代を見越し、学び直しがもっと柔軟にできるよう、県内での仕組みつくりをさらに進めてほしいいと切に願います。

一般質問H29.2.23⑥

雇用で悩みが深いのが、離職者、既卒者、引きこもりの問題です。
学びなおし制度に乗る前提条件として、「生活リズムの安定」が必要です。先日ポリテクセンターでもお話をお聞きしてきたのですが、センターでも、技術を身につけさせるだけでなく、乱れた「生活リズム」を整える指導も必要となってきたそうです。
私の知る限りでも、離職者や無職の若者が、あっという間に生活リズムを乱すのを心配しているところでしたので、センターでのお話には「やっぱり・・」と感じました。

➉それならば、少年自然の家などを活用し、集団生活で自然に親しみ心身を錬磨し社会性や自律の精神を鍛えなおすプログラムを設けてはいかがでしょうか。所見を伺います。
本来、学校教育で、「国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」を図るべきなので、元教員として忸怩たる思いではありますが、ゲームやSNSの蔓延は、人々の生活リズムをあっという間に乱してしまいます。「学びなおし」のその入り口で、そこを正す必要も生じてきていますので、どうか、この点にもしっかり向き合っていただきたい。

一般質問H29.2.23⑦

さて日曜日の県民福井の、二つの記事に目が留まりました。ひとつは「武生高校で本県出身の外交官の方が『外務省の仕事や外交官を志す心構え』などを講演」という記事で、もう一つは県内高校の職業系学科で学ぶ生徒たちが研究成果を発表する「ふくい職業教育フェア」の記事です。
前者は、県内有数の進学校の生徒たちが、世界をフィールドに仕事をするというダイナミズムに夢を描き、県外の難関校を目指すモチベーションにつながっただろうなと想像すると同時に、地元に戻るものはその3分の1なのだという寂しさも感じました。
後者は、最優秀賞に輝いた科学技術高校の職員玄関におかれた、和紙に柿渋を塗った電気自動車が目に浮かぶと同時に、老朽化したその校舎・設備が目に浮かびました。

かねてより県は、県内進学校から国立難関校に何人合格したかと言うことをたいそう気にかけているという話を耳にしております。また私の教え子たちからも、「進路指導では私学に行きたいと思っていても、やたらと県外国立校を勧められる。繰り返し言われると、その方がいいのかなあと言う気になる。」と聞いています。
 本来進路指導は、どのような職種で何をしたいか、そのために何を学ばなくてはいけないかと言う将来のキャリア観をベースになされるべきものです。努力は、具体的目標あってこそです。

⑪まず、教育委員会は国立難関校への進学者数を増やすプレッシャーを学校に与えていないか、学校は子どもに対する進路指導で、テストの点数で将来を描かせてはいないか、現状を伺います。

一般質問H29.2.23⑧

前回ご紹介したフィンランドの教育では、小学校からモノツクリの授業を大切にしています。小学校でクリスマス飾りやまくらカバー、ひしゃくなどを、中学校で宝石箱や料理を作ります。工芸と言う生産活動を通して、手と頭脳の技術を発達させ、働くことを教えます。アイディアを出し最終製品を作り出すまでの間に、倫理学・環境学・美学と経済学・安全・責任感・思いやりなど、理論的情報を実践に応用することで、生徒の個人的な成長を促進します。
さらに、中学校社会科では労働の適切な価値、起業家精神の基礎、公的サービス、自己の行為の法的帰結などを学びます。
16歳以降の進路は、自分に合った専門性を身につけられる学校を、進路指導の先生のアドバイスを得て自ら選びます。女性生徒の3分の一、男子生徒の半数が専門学校に進学するそうで、「成績が悪いから職業系高校に行くという考えは、現在ではほとんどない。」と国家教育委員会の参与が述べています。

モノツクリは大事です。職業教育は大事です。現在、県内企業は、職業系高校の卒業生を奪いあっている状況ですし、人口オーナス期で、今後さらに少子化が進むわけですから、この状況は続くと思われます。

お隣の石川県の議員に「金沢市や石川県は工業高校に力を入れていますね。」と話しかけたら「モノツクリは大事ですから当然です!地元の評価も高いですよ。」と即答が帰ってきました。
学校の教員も、「伝統産業はじめモノツクリが根付いているので『金沢として守らんなん!』と、実績重視で、生徒の資格取得に力を入れている。歴代市長はじめ上の人がそれをよくわかっていて工業科を大事にしている。」と言います。実際、3Dプリンターなど最新の機械を導入するなど、毎年の予算のかけ方もうらやましいばかり。

福井はどうでしょうか。県外大学に子供たちを出すことばかりに熱心なのではないでしょうか。

⑫職業系高校に、もっと力を入れるべきではありませんか?
⑬またそもそも、進路指導する教員側に、キャリア観や現状認識、産業労働部が描く「職業能力開発計画」やその中の「学び直し」の制度などが十分理解され、生徒に周知されているのでしょうか?

雇用のミスマッチや早期離職、ニート・フリーター・引きこもりの若者が多いわけですから、「福井は人生の仕切り直しができるところだ」と伝えられるようにすべきです。

一般質問H29.2.23⑨

高等学校再整備計画では職業系高校をまとめて複数の異なる職業系専門学科を併設する「総合産業高校」を設置する方針が打ち出されていますが、その総括が必要な時期だと感じます。それは、工業高校なら工業高校のモノツクリスピリッツがあり、水産高校なら水産高校の水産魂がある、あったのですが、それが総合産業高校では確実に弱まったと現場の嘆きが聞こえるからです。製造業の多い福井にあって、職業系高校で、その精神が十分培われていないとすれば、福井のふるさと産業自体の弱体化を招きます。

⑭職業系高校の在り様を今一度見つめなおし、地元を支える人材をいかに育成すべきか、現場企業や教員の声を聴き、今後の高校再編に活かすべきと考えますが所見を伺います。

県は、UIターンに力を入れておられますが、若い子がこんなことをつぶやきました。
「進路指導では県外国立へ行け行けと言って、行くと今度は帰って来いという・・・福井県って勝手ですよね。」
この言葉に私は返す言葉がありませんでした。
 まずは貴重な担い手を県外流出する、まして助長させる体質の改善をすべきです。

最近教育委員会を知事部局に置いて、広角度から教育施策を行う例も出ているようです。「人を材料」としてではなく、「人を財産」とする「人財」と認識し、私学・公立・産業界の連携をもって、地域人材を育み、県の発展の礎とすべきです。

福井が真の教育県たるよう、心より祈念し、質問を終わります。