予算特別委員会4「段階的避難の実効性」
細川
原子力災害から周辺住民を守る避難計画について伺う。原発には絶対の安全はないという前提で、私達はもっとリアリティを持って避難計画を練っていかなくてはならない。現在策定中の避難計画の大きな柱というのが「段階的避難」だ。事故の際にはまず5キロ圏内の人々が最初に避難し、5キロより外の人々は建物の中にとどまることになっている。その後、風向きや放射線量を考慮して順番に避難していく。この段階的避難によって住民の安全が守れるのか。先日NHKのクローズアップ現代「原発事故にどう備えるか」という番組の中で検証を行っていた。福島では実際に3キロ、10キロ、20キロと段階的避難指示が出されたが、実際には大渋滞が起きた。原因は、避難指示が出たエリアの外の住民も一斉に避難したため。原子力事故が想像以上に人々に不安を与えたと、段階的避難や屋内退避の混乱さを示して、現実本当に実効性があるのか疑問を呈していた。
以前「原子力災害においての災害時要援護者は、以前、子供や妊婦、子育て世代の若者ではないか」と質問し、「乳幼児や妊婦は災害時要援護者と位置付けられているので一般の住民より一段早く避難する」と答えをもらったが、子育て世代の若者に関しての回答は得てない。福島事故の際、富岡町の病院で看護師たちが患者に付き添うか、先に逃げるかの判断を迫られているが、その時若い看護師は看護師長に、「若い人は先に逃げなさい」と言われたから、先にバスに乗ったと言っている。これが道理だろうと思う。若い者や次の世代の者を安全な場所にいち早く逃がしたいと言う人の気持ちというものを踏まえないと、段階的避難や屋内退避も机上のものとなる。
再度伺うが、乳幼児や妊婦だけでなく、子供や子育て世代の若者も、一段早く避難する災害時要援護者に位置付けるべきではないか。
危機対策官
国の災害対策審において、避難の際に通常以上の時間がかかる高齢者、障害者、乳幼児等を一般の住民より一段階早く避難する施設敷地緊急事態要避難者というふうに位置付けていて、県の防災計画においてもその考え方に基づいたものになっている。この考え方に基づくと、乳幼児だけでなく、小中学生の18歳未満の児童生徒については、実際に逃げようとした時に、自ら車両等の避難手段が確保できないことも考えられるので、こういう方々については、施設敷地緊急事態要避難者に該当すると考えている。一方で、それ以上の若者、若者という定義がどこまでかと不明確ではあるが、若者ということだけで言うと、避難の実施に通常以上の時間がかかる、これが最も基本的な要件であるが、それには該当しないのではないかと考えている。こうした要件というのは段階避難をするために、避難に時間がかかる人は早く出そうという発想で作った制度であるので、それに基づいて広げていくと、いろんな考え方に基づいて際限なく対象が広がっていくとことにもなるので、今の制度、要件というものに基づいて避難計画を考えていきたい。
細川
青写真として段階的避難を出すというのは分かるが、実効性のあるものにしようと思ったときに、福島で起きたような人の心理状態とか動き、判断をしっかりと検証して反映していかないといけない。テレビでも言っていたが、看護師や警察官、消防の方たちが住民の命を守らなければという使命感に燃えて、結局自分の命をなくしてしまうというのは倫理的にどうなのか。被災地で見受けられるのは、行政マンが自分の家も被災しているのに、残って最後までやっていて健康状態が悪くなる。私が一番目についたのは行政マンの方だった。仕事なのか家族なのか判断に揺れることだとか、細かい人の想いというか気持ちというか、そういったところまでしっかり検証した上で、こういう計画を立てていかないと、結局描いた絵は良いけど、実際の人の行動は違うとなると失敗してしまう。これも倫調等を設けてテレビでも言っていたが、再度伺う。
危機対策官
先に申したのは、制度として全部の人を避難させるための仕組みとしては、時間のかかる人を先に避難させる。その後段階的に避難させるということで、最終的に全ての人を避難させるのに有効だということで説明をした。只、今細川委員が言うようにそれに基づいて皆さんが適切に行動するためには、それぞれの立場とか、それぞれの地域とかで、きめの細かな説明とかをその人たちに対してどういう不安を持っているのか、どういうふうなことがあればどういう情報が来るか、それに基づいてどう判断すればいいとか、制度・運用両方の面について、本当に人々の心の不安を取り除くようなきめ細かな対応が出来なければ、いくら制度を作っても、人が行動をしなければ実効性のないものとなるというのはその通りだと思う。我々もそこのところがある意味一番大切な、難しい課題だと感じている。そういったことを前提にこれから、関係市町と共に我々の計画を住民の方に理解してもらい、どういう不安があるのか、じゃ、どういう説明、指示を出せば、実際の時にどういうやり方をすれば理解をしてもらえるかということについては、関係市町と十分に協議をして対応していきたいと思っている。
細川
国にしっかり言っていただきたい。
この計画については分からないことがたくさんある。屋内退避とは何だろう。屋内退避の時間はどのくらいかかるのだろう。2~3日かかったら食べ物どうするのだろう。その時インフラはどうなっているのだろう。あるいは屋内退避は解除されるのだろうか、いろいろ考える。屋内退避一つをとっても想像できない、考えていかなければならない問題がたくさんあるので、国には投げかけをお願いしたい。